①馬場ファーム 馬場康平さん

ブランド化を見据えて、あえて「脇山米」

福岡市早良区脇山にある馬場ファームと言えば、「脇山米」で知られます。馬場さんが栽培したお米だから、「馬場米」でも、カタカナの名前でもいいはずですが、あえて地名を冠したのは「この名前でブランド米にしたかったから」と馬場さんは語ります。

脊振山から流れる清流を使って栽培した脇山地区のお米は、かつて天皇への献上米でした。「大嘗祭」とは何千年も行われて来た重要な宮中祭祀ですが、1928年、「昭和の大嘗祭」において新穀を収穫する「斎田」は、京都から見て東は滋賀県、西は福岡県と占いで決まりました。中でも脇山村(当時)の米が美味であるとして献納米に選ばれたのです。ところが1世紀近くたち、「献納米だったことを福岡市民すら知らないんです。発信している人もいない。だからこそ米を作っている人が、後世に脇山米の魅力を伝えていかなければならないんです」

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また2023年6月にはラグジュアリーホテル『ザ・リッツ・カールトン福岡』がオープンしましたが、館内の日本料理店『幻珠』では脇山米が提供されています。「福岡市中央区大名にできると聞いた時からの夢が実現しました。まさか総料理長がマリンメッセのうちのブースに来てくださるなんて」。


 

博多の西洋野菜研究会に入り、地産地消を目指す

馬場ファームで栽培しているのは、カリーノケールやクレソン、サボイキャベツ、ホワイトスイートコーン、サラダラティーナなどカタカナの野菜がメイン。珍しいサラダラティーナ(蕪)はみずみずしくて、柿のようにほんのり甘いため、お子さんにも人気だそうです。少し厚めに切って、サクサクとした食感を楽しみたくなります。ニンジンも黄色や紫などカラフルな色合いの品種など、一般的ではない野菜を手掛けています。

馬場康平さんは5~6年前から博多の西洋野菜研究会に入っており、仲卸を通して飲食店に下ろすしくみを作っています。もともと「さいたまヨーロッパ野菜研究会」が始めた活動で、地域内の若手農家・レストラン・食材卸・種苗会社・スーパー・食品メーカー・行政などが連携して、市内産ヨーロッパ野菜の地産地消活動に取り組んでいくというものです。コロナ禍では、活動の機会も減りましたが、珍しい野菜を手がけようという考えです。

10年前、馬場さんが農業を始めた時、最初にブロッコリーも栽培しました。離乳食にも使われるブロッコリーなら、「10年は大丈夫。子どもが食べているから」と。しかし現在、ブロッコリーは全国的に飽和状態。そこで現在では手をひいたそうです。

 

有名ホテルからも注文が来るおいしい野菜

5年前、畝1本から始めたケール畑も、今や3反もの広さになりました。馬場さんが、ケールをちぎって「食べてみてください」と渡されましたが、ケールと言えば青汁イコール苦い、というイメージですよね。でも馬場ファームのケールは、「あれ、全然エグくない!」。サラダでもおいしく頂ける味です。「販路拡大したいんですが、余る時もあるんですよね。だからロスを無くすために、緑が美しいジェノベーゼやケールチップなど加工品にしたいんです」と馬場さん。

この味のいいケールを作る秘訣は、やはり肥料。ヒマワリを植えて、それをすき込んで緑肥にすることで、土壌の質が良くなります。化成肥料だと、ケールにエグみが出やすいのですが、馬場ファームは鶏糞・豚糞・茶かす・コーヒーかす等がメインに、1%くらい化成肥料と液肥。このこだわりが豊かな土壌を作り、おいしい作物につながっていくのです。

『ヒルトップホテル(旧山の上ホテル)』からも引き合いが来て、今、カブやクレソンを卸しています。同ホテルは戦後間もない1954年に開業し、文豪たちに愛された宿で、コンセプトは「もし人が他人に与えられる最高のものが誠意と真実であるなら、ホテルがお客様にさしあげられるものもそれ以外には無いはずだと思います」。そんな誠意と真実を重んじるホテルから選ばれたのです。


 

悪天候がジェラートの開発のきっかけ!?

2017年の秋、そろそろ米を収穫しようという時期に、強風と大雨に見舞われました。収穫できず、どうしたらいいか困っていると、福岡市から6次産業化の提案がありました。マーケティングもブランディングもわからず、とにかくお茶とブルーベリーを使ってジェラートを作ってみました。実は同年11月、米どころ熊本県菊池市主催の「第1回九州のお米食味コンクールin菊池」が始まり、脇山米は個人総合部門特別賞を受賞。献上米という歴史に加え、現在の米の味にも客観的な評価を得て、「お米でもジェラートができるのではないかな」とチャレンジ。炊いたお米にちょっぴり塩味のジェラートは、お披露目会で若い女性から「面白い!」と好評を得たのです。

 

将来は法人化して雇用を生み出したい

数年前まで、自分のことを“労働者”だと思っていた馬場さん。「長時間働いても、天候等のせいで収穫が少ない時もありますよね」。しかし今では「農業はサービス業」だと思うようになりました。化成肥料を使わない、珍しい品種を作る等、お客様に喜ばれることをすること。それが評価を得ています。「潮目が変わって来たのを感じますね。『おまえたちの時代だから』と言われるようになったし。食べる人を笑顔にしたいというコンセプトは変わりません。それに加えて、『馬場さんのところは楽しそう。行ってみようか』と思われたいですね」。

しかしどんなにがんばっても、個人では限界があります。馬場さんは「法人化をして、人を雇いたいですね。馬場ファームの提唱する『農業でワクワクドキドキを提供したい』の中に、地域で雇用を生み出すことも入っています。利益が出る農業を目指したい。成果物を作りたいですね」。

福岡市という都市部にあり、博多駅まで電車で1本という立地の良さ。電車通勤で農業をすることもできます。また農業体験など観光面でもアクセスの良さは魅力的です。「地域に人が集まれば、脇山地区が活性化する。自分たちが年を取った50年後に、子どもたちがたくさんいるような地域にしたいんです」。JAで働く父を見て、「将来は農家になりたい」と作文に書いた馬場少年のように脇山地区で就農を希望する子どもたちを増やすために、馬場ファームは活動しています。

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