⑪一般社団法人イドベタ(I do better)

 

地球環境に良いことを目指すクリエイター集団!

一般社団法人イドベタは「井戸端会議」のように集い、 つながって、環境問題を自分ごととして考えることができる、エコフレンドリーな社会の実現を目指すクリエイターチームです。「イドベタ」とはI do betterからの造語で、主力メンバーは男女各2名。環境コーディネーターのみついまゆみさんは、銀行員・旅行会社・結婚出産を経て、現在はTVの映像ディレクター。コンポスターの松井聡史さんもTVの番組制作をしておられますが、2019年に制作された番組『人類vsプラスチック』は科学技術映像祭で内閣総理大臣賞を受賞。また廃材アートのペイントクリエーターであるしばたみなみさんは、日本財団・環境省共同事業「海ごみゼロアワード2021」にて環境大臣賞受賞するなどの実績があります。

 

動画は、こちらをクリックください。


事務局の矢野裕樹さんは、株式会社SCBイノベーションアカデミー福岡の代表取締役で、伴走型の創業支援をしておられます。

この4名を中心に、各地で様々な活動をおこなっています。漁網をリユースして、つる植物がのぼっていくために作った土台は、福岡市のグリーンカーテンコンテストで優秀賞を受賞。加えて、子どもたちが漁網の間をくぐる障害物競走「ギョモリンピック」も開催するなど、活動の輪が拡がっています。

 


 

緑の漁網でクリスマスツリーを作ろう!

今一番力を入れている活動が、「漁網(ぎょもう)で作るクリスマスツリー」です。

糸島の海でのビーチクリーンでプラスチックごみを拾った際、引き取った廃棄漁網は、なんと6トン。みついさんは、「2023年秋くらいに『網の緑がきれいだな。クリスマッスツリーにしよう!』とアイデアが湧きました。見たら『漁網だ』とわかるように、あえて加熱したり形を変えたりしていません。漁網のせいで海が汚れており、漁師さんが困っていることを考えようと提案したいからです」と語ります。

 

その後、緑の網を巻き付けてクリスマスツリー12本に再生させ、糸島のキャンプ場などに設置させてもらいました。子どもたちが網を支柱に巻くところから作ったツリーもあります。ツリーのオーナメントも、海のゴミやイベント会場で出たカップを再利用したものです。イドベタのワークショップで扱う「ヒナモロコイノボリ」の材料も廃材ばかりです。


 

モノ・ヒト・マチがめぐる資源循環施設『めぐるラボいとしま』

2023年12月17日、拠点となる『めぐるラボいとしま』が筑前前原駅近くの前原商店街にオープン。協力してくれる17の事業者さんをプリントしたトレーナーも制作しました。松井さんによると、「ラボの目的や役割は大きく分けて2つあります。まず第一にイドベタの活動を行う本拠地であること。第二に“循環”をテーマに商品作りをしている人のためのシェアショップです」。

各地で出前講座を行うワークショップの準備を行うのも、この『めぐるラボいとしま』。ワークショップや展示会場になることもあります。拠点を持つことでヒト・モノ・情報などが集まり、活動の幅が拡がります。

また、地球にやさしい活動をしている作家さんなどのシェアショップも店内にあります。これまで店舗を持たなかったお店にレンタルスペースや棚貸し(商品の委託販売)を行っており、30店舗ほどが出店できます。

 



 市場では売れない「未利用魚」と呼ばれる小魚を原料にした食品や、食べられるコーヒーカップ、牛乳の紙パックをリサイクルしたバッグなどが販売されています。松井さんは「キーワードは“循環”です」。

店頭には『愛着循環』と書かれた衣類回収ボックスが設置されています。捨てるにはしのびない愛着ある衣類を無料で提供していただき、古着として販売(500円~2,000円)することで新しい持ち主に愛着を循環させる仕組みです。


 

宿場町だったレトロな商店街の魅力

『めぐるラボいとしま』が面している通りは、参勤交代で使われた唐津街道です。前原商店街は、江戸時代には宿場町「前原宿(まえばるしゅく)」として栄えていました。江戸時代初期、唐津街道が開通した後に、福岡藩が舞獄山(まいだけさん/現在の笹山公園)の麓にあった民家や寺を移動させて整備されたのが、前原宿。昔の面影を残す前原商店街の中に、昔の佇まいを残す築200年くらいの建物もあります。明治34年に建築された呉服を扱った出店の建物が『古材の森』という飲食店となっており、糸島弁当も販売されています。みついさんは「唐津街道だった商店街に古くからいる人と、新しいオシャレな店舗が混在し、融合しているのが前原宿の魅力だと思います」。

『めぐるラボいとしま』の建物は築約80年。婦人服のセレクトショップで、化粧品や衣料品・手芸用品などを販売していた陳列棚もそのままです。レトロな照明や編み針なども「味がある」と、あえて残しました。「昭和初期には最先端だったはず。できるだけ手を加えないで、商店街の良さを活かしたいですね」とみついさん。

 お店ではコーヒー・はちみつ・ナッツ・オリーブオイルなど食品も扱っていますが、パッケージロスを目指して量り売りです。販売している容器も、リユースやリサイクルができるようにガラス瓶。または袋など入れ物を持参してもらう形式です。


 

イドベタ発! サステナブルなツアーを企画

またイドベタでは、糸島市観光協会・糸島市教育委員会などの後援で、地元をめぐるサステナブルツアーも企画しています。2023年に、近くの櫻井神社が国の重要文化財に指定されたので、11月23日に行われる能の奉納祭も企画に盛り込もうと考えました。旅程としては、海でビーチクリーン→コミセンにて廃材アート体験→郷土料理そうめんちりを味わう→櫻井神社で能を見物→神社そばのホテルに宿泊→イドベタの拠点『めぐるラボいとしま』に集合→学芸員の資格を持つガイドと共に商店街を歩く「そうちくツアー」。地元・前原宿の方言で「そうちく」とは、ぶらぶら歩くことを意味します。   

「前原には夫婦岩があり、夏至の時期、男岩と女岩の間に日が沈んで、マジックアワーにはブルーになるんです。そういう海と山を楽しむツアーは、おそらくすぐできます。それなりのネットワークは私が持っているので。ただ、前原というエリアを選んでもらう魅力の一つとして、私たちはクリスマスツリー作りを入れたいと考えているんです。根っ子には、『できれば日本だけでなくて、世界の人に漁網の問題を知ってほしい』という想いがあります。環境問題など意識の高い人だけをターゲットにしたサステナブルツアーではなく、抱き合わせで一般的な観光メニューも入れた方が広い層に受け入れられるのではないでしょうか」と、今まで取材した知識や人脈をもとに試行錯誤しています。


 

なぜ環境問題に取り組んでいるのか? 

イドベタのメンバーが環境問題に興味を持ったきっかけは、どのようなことだったのでしょうか。みついさんは、「以前はずっと福岡市の百道(埋め立て前)に住んでいて、糸島市に移住して14年。前原でサーフィンもやります。TVディレクターとして取材する中で、ビーチクリーンと出合ったんです。使われなくなった漁網は海の生き物に絡んで命を奪ったり、船のスクリューに巻き込まれて大事故につながる恐れがあったりと、大変危険なものです。その漁網は漁師さんの持ち物ではなく、糸島市の海の沖に浮かぶ『ゴーストギア』、つまり誰の物かもわからない廃棄物なんです。プラスチックごみ1億5000万トンの約半分がゴーストギアと言われています。海の恵みを私たちにもたらしてくれる漁師さんが、こんなことで困っているなんて、と驚きました」。

それを知った2016年以降、彼女は「環境問題に特化した番組しか制作しない」と決めました。メディアを通じて伝えるのに使命を感じてやって来たのですが、海のゴミは一向に減りません。みついさんは「だからメディアを通じて伝えるだけではなくて、九州大学の先生と一緒に2019年頃からリアルに伝えることにも取り組み、環境教育コーディネーターの資格も取得しました。しばたさんと一緒に神奈川県藤沢市湘南に行き営業して、一緒にやる人を増やそうとしています。イドベタのI do better を、We do betterにしたくて」。


しばたさんの作品は、すべて漂着した海洋プラスチックなどゴミを素材として活用しています。「創作活動の中で出会った“海ごみ”と呼ばれる存在。そのモノたちを新しいイノチ(作品)に昇華する!という想いを込めています」と、しばたさん。

松井さんは、「今は消費する一方の社会です。必要な分だけ使うとか、リサイクルやリユースということをわかってほしいですね。その拠点となる『めぐるラボ』が今までシャッター通りだった前原商店街に生まれたことで、興味を持ってもらえます。モノだけではなく気持ち・考え方もお届けすることができるようになりました。共感して、『私はこういうモノを作っているんですよ』と声をかけてくれる人も増えています」

作家さんだけではなく、「このラボの考え方をわかってくれた地元のおばあちゃんが、端布で手作りされたバッグをたくさん寄付してくださったんです」とみついさん。もったいないという気持ちで一針一針、大切に手縫いされたものは愛着の塊です。誰かの役に立つ場があれば、地域のお年寄りのいきがい作りにも貢献することでしょう。

 


福岡型サステナブルツーリズム推進事業

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