②ホテル日航福岡レストラン

 

「料理は畑から始まる」という教え

1989年にJR博多駅前にオープンした『ホテル日航福岡』。様々なかたちでSDGsに取り組んでいますが、その中の一つに自社農園『ホテル日航福岡 糸島ファーム』があります。同ホテル2階にあるバイキング会場『カフェレストラン セリーナ』には採れたて新鮮な糸島の野菜が並べられています。その後ろの黒板には、糸島ファームの畑の畝ごとに、どんな野菜が栽培されているか表示されているのです。

 

お話を伺ったのは、左から『日本料理弁慶』の稲垣祐樹副料理長、千々松雅敏総料理長、『カフェレストラン セリーナ』の米倉和成シェフです。

 

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料理人の皆さんは千々松総料理長が牽引される調理部に所属されています。その調理部のフィロソフィとして掲げられるのが、『「近代フランス料理の父」と呼ばれるA・エスコフィエの言葉であり、第一に「1、料理は畑から始まる」です。』1989年の『ホテル日航福岡』開業当初から2022年まで33年間、総料理長を努められた「ムッシュ」こと中橋義幸名誉総料理長の「料理は畑から始まる」との思いが、自社農園を実現させました。

 調理部スタッフが『糸島ファーム』で畝づくり、種まき、間引き、草取りなど成長の過程に携わっています。虫に喰われる、割れるなどの被害も経験しているので、「イノシシに狙われるほど甘く、やっとここまで育ったサツマイモだ」と、野菜への感謝からスタート。サツマイモのポタージュ(写真上)を扱う時も、愛情の込め方が違うはずです。

 

野菜に感謝し、無駄なく活用する

 

形が不揃いでも、ピューレにすれば野菜の味そのものを感じることができます。

左の写真では赤いビーツのピューレや、カリフラワーのピューレ、ゴボウのピューレなど

 

が彩りを添え、お客様を目でも舌でも楽しませてくれます。

左の写真中央は、カブをペースト状にしてゼリーにし、あたかもスライスしたカブのように丸く成型したもの。その下には刻んだカブ、帆立、エシャロットなどがハーモニーを奏でています。形が悪いカブでも大丈夫です。右の酒粕のムースと菊花のそばにある、親指の先ほどの小さなカブは市場では手に入らないので、もしかしたら間引きカブかもしれません。

『日本料理弁慶』の稲垣副料理長によると、「朝食の浅漬けは、常に糸島野菜を提供していますが、『美味しい』『お土産に買いたい』と、その都度お褒めの言葉を頂きます」。左の写真の浅漬けは中央が紅芯大根、左がその葉、右が福岡名産かつお菜(右上の写真は畑の様子)です。かつお節のようにダシが出るので、福岡ではお雑煮にも使用される野菜です。和食の料理人が腕を振るえば、間引いた野菜でも、美味な一品になるのです。

 

 どんな野菜かわからないから、腕が鳴る

『糸島ファーム』の柴田さんが何年もホテルに納めるうちに、どんどん野菜のクオリティが向上して来ました。また、無駄にならないような収穫サイクルも考慮してくれています。それでも品種・量・大きさ・形など予測できません。千々松総料理長は「その素材をどう活かして、お客様に喜んでいただけるか考えるのが腕の見せどころ。料理人の腕を上げるのに良いんです」。

 

例えば和食や中華で使用される冬瓜。今年は多すぎるほどの収穫でした。それが『カフェレストラン セリーナ』の米倉シェフの手にかかると、ニンニク・オリーブ油・月桂樹などを効かせたペペロンチーノ風の「冬瓜とひよこ豆の煮込み」という料理が生まれました。

一番使いやすいのは間引きした小さな野菜です。「昨日、糸島の畑から直送されたばかりの野菜です」と、お客様にもアピールしやすく、花や茎までも美味しいのです。大根やニンジンは皮を剥かずに味わえます。   


『テーマレストラン レ・セレブリテ』では前菜(下の写真)中央の小皿に、糸島産の姫ニンジンのスライスが乗っていました。これは間引きではなく、もともと姫と付くほど小さな品種ですが、少量でも珍しい野菜を口にできるのは旅の良い思い出になることでしょう。スーパーマーケットでは目にすることのない珍しい品種を中心に、年間60種ほどの多品種少量栽培。そんな『ホテル日航福岡 糸島ファーム』ならではの魅力が、ここにあります。

また、ほぼ無農薬で育てられた糸島野菜を、とことん使い切る工夫が「自家製ECOラー油」です。根菜類のしっぽや栄養豊富な皮などに、生ハムやアンチョビなど動物性の食材でアクセントを付けた洋風の食べるラー油もバイキングで出されています。それを「ECOラー油」と名付けることで、お客様にも「フードロスを減らそう!」と訴えることにもなります。


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